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LPGタンカーのドック工事 Vol.1 2/2

LPG船の構造と特殊な機器

カーゴタンク、ホールドスペース

LPG船のカーゴタンクは、船の前後方向は四つに仕切られ、また、左右は中心で仕切られていますが、左右のタンク上部の仕切り壁は密閉されておらず、ガスが左右のタンクを自由に行き来できるようになっています。(タンクの数は合計8個)

LPGを陸上のタンクへ送り込むカーゴポンプは各タンクに1台ずつ設置されており、左右のタンクの仕切り壁下部には弁が取り付けられ、片方のポンプが故障した時にはタンクの仕切り壁の弁を開き、隣のタンクのポンプでカーゴを陸上に揚げることができるようになっています。
カーゴタンクの外側には断熱材を取り付け、外部の熱がタンクに侵入しないようにしています。カーゴタンクと船体との間をホールドスペースといい、何らかの原因により、LPGタンクからガスが漏れても爆発を引き起こさないようにするために不活性ガスを封入しています。ここにはLPGガス検知器も取り付けられていて、少しのガス漏れも検出できるシステムとなっており、安全を確保しています。
LPG船のカーゴタンクはプロパンを積んでいるときはマイナス40℃、定期的検査のためシンガポール地区の修繕ドックに入る時は、外気温度と同じプラス35℃くらいになります。温度差は75℃となり熱による膨張・収縮量が大変大きくなります。このため、カーゴタンクはガッチリと固定せずに、タンクの首の部分のみを固定し、他は伸縮できる構造となっています。しかし全く自由に動く構造とすると、航海中、時化に遭遇した時に、タンクの動揺が激しくダメージを与える危険性や船の安定性を損なう危険がありますので、タンクのまわりには、大きく動揺させないために、木材で揺れ止め(アンカー)を取り付けてあります。
LPG船のカーゴタンク構造
LPG船のカーゴタンク構造

再液化装置

大気圧のもとではプロパンは約マイナス40℃、ブタンは約マイナス0.5℃以上で気体となってしまいます。航海中、断熱材を取り付けてあっても大気の熱がタンクに侵入し、プロパン、ブタンの温度は上がってしまいますので、プロパン、ブタンの液を冷却する必要があります。このために、LPG船には再液化装置というものが設置されています。簡単にいうとエアコンや冷蔵庫のようなものですが、この装置はコンプレッサー(圧縮機)、コンデンサー(凝縮器)および膨張弁(膨張気化し低温、低圧にする弁)から構成されています。(空調装置や冷凍装置と同じ)


再液化装置図
再液化装置図

再液化装置
再液化装置
タンクからLPGのガスをコンプレッサーで吸引、圧縮し、圧縮され高温となったガスはコンデンサーで海水によって冷却され液化されます。この液化されたLPGは膨張弁を通してカーゴタンクに戻され、タンク内ではスプレー状にタンクの壁に吹き付け、タンク内で液体から気体に変わる時に、タンク内の温度を奪いタンクを冷却します。これを繰り返すことによってタンクの温度を下げています。大気から侵入した熱をコンデンサーにて海水に逃がす作業を行っていることになります。
ペルシャ湾等のLPG積み出し港で、船にLPGを積み込むまでの作業として、各タンクの温度をそれぞれ前述のプロパンは約マイナス40℃、ブタンは約マイナス0.5℃以下まで冷やしておきます。
LPGを積み込む時は、タンク内で液体がガス化しやすく、カーゴタンクの圧力が上昇します。この時も再液化装置がフル稼働して、カーゴタンクの圧力が許容値を超えないようにコントロールします。
(再液化装置が十分に働かないと、タンクの圧力が上昇しすぎてしまい、積み込みスピードを落として対応するか、タンク内のガスを陸上のフレアスタックに逃がして燃やさなければなりません。積み込みスピードを落とすことはそれだけ停泊時間が長くなり無駄な時間が発生します。また、フレアスタックで燃やしたLPGも船が積み込んだ数量に加算されますので、荷主の負担となってしまいます。)
フレアスタック:製油所等可燃性ガスを取り扱う工場では必ず設置されている装置で、ガス等を燃焼処理する装置

カーゴポンプ

カーゴポンプ
カーゴポンプ
LPGタンカーも原油タンカーと同様、本船のポンプでカーゴ(LPG)を陸上のタンクへ送り込みます。ただし、原油タンカーとは異なり、ポンプはカーゴタンクの底部にあり、LPGの中に浸かっています。日本のLPGタンカーではポンプと電動モーターが一体となったサブマージドと呼ばれるタイプが多く使われており、カーゴタンクの底部に取り付けられ、LPGの液体に浸かっています。外国船ではポンプのみがタンク底部に取り付けられ、電動モーターは甲板上に据え付ける、ディープウェルと呼ばれるタイプが多く使われています。ポンプの能力は 500〜550m3/hrで各タンクに1台、計8台が取り付けられています。

IGG(不活性ガス発生装置)

通常の航海中、再液化装置やパイプの修理を行う時に、装置内やパイプ内にはLPGガスが充満しています。作業を安全に行うために、このLPGガスを不活性ガスにより追い出し、爆発の危険を取り除いてから行います。また、ホールドスペースには不活性ガスが封入されていますが、外気温度の変化等によりホールドスペースの圧力が低下してしまいます。このような時には不活性ガスを補充する必要があります。
不活性ガスも以前は陸より窒素ガスを船のタンクに積み込み、適宜ホールドスペースに補給していましたが、現在ではIGG(Inert Gas Generator:不活性ガス発生装置−−−軽油を燃焼させその排気ガスを利用)を装備し、陸上からの供給なしで補充できるようになっています。
不活性ガス発生装置図(IGG)
不活性ガス発生装置図(IGG)
次回は、具体的な作業の例を紹介します。
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