オイルロード超大型タンカー12,000kmの旅「一航海の軌跡」Vol.4 日本帰港 1/4

本社のサポート体制

船の安全運航のためには、本社からのサポートが欠かせません。そうした支援業務について少し紹介したいと思います。

海賊対策

最近、アデン湾やソマリア沖で海賊行為が発生したというニュースをよく耳にします。
マラッカ・シンガポール海峡や南シナ海では金品等の奪取を目的とした武装強盗が多く、ハイジャック事件も起きています。これに対し、本社では入手した必要な海賊情報を各船にメールで連絡し、当該海賊行為のあった海域を航行する時に注意を喚起しています。
本船ではIMO(国際海事機関)の海上安全委員会(MSC)による海賊および武装強盗の防止ガイドおよび社内規定のGuidance for Preventive Actions Against Piracyなどを参考にし、海賊行為のあった海域での見張員の増強、海賊センサーの設置、消火ホースによる散水を実施し、海賊船の接近防止に努めています。

気象情報

パソコンで閲覧できる気象情報
パソコンで閲覧できる気象情報

船が航海する為の必需品となる“天気図”。従来は気象庁から情報をFAXで受信していました。
現在では、リアルタイムで気象情報をパソコン画面上で確認できるシステムを搭載しています。
これにより、本船では1日に2回欲しい情報を見ることが可能になり、特に以前は信頼性の低いFAX情報で確認していたインド洋の気圧配置図と10日後までの気象予想図(従来は72時間)が見られるようになったことは、船長が安全で経済的な航路を選定する際の大きな判断材料となっています。

揚荷役を円滑に

産油国から運んで来た原油を船から陸揚げすることを揚荷役といいますが、日本帰港予定日の7日~10日程前に揚荷計画や原油洗浄(原油でタンク内を洗浄すること)計画が本船から本社へ送られてきます。本社の担当者は、その計画表をもとに安全な荷役を実施する上で問題がないかを確認します。

揚荷計画では、積荷量と揚荷レート等から、計画揚荷時間が適正であるか、船体の一部に強いストレスがかかることはないか、短時間に急激な喫水の変化等はないかなどを検証し、問題がある場合は担当者が助言を行います。特に、短時間に急激な喫水変化があると、係船索(岸壁の係船柱と船とをつなぎ止める太いワイ ヤーロープ)が切れ、船体が移動する可能性もあり、船体移動量が大きい場合には、本船と陸上の配管を繋いでいるチクサンアームが外れ、海洋汚染事故が発生する恐れがあるので慎重に確認しています。

揚荷計画表
揚荷計画表

タンカーに積んだ原油は、航海中に堆積物(スラッジ)がタンク側壁や底に沈殿しますので、揚荷と並行してタンククリーニング装置を使用し、積荷である原油の一部を利用し洗浄マシンからタンク内の壁や底部に向かって噴射して、スラッジを洗い流します。この作業を原油洗浄といいます。 原油洗浄計画では、実施タンク数、実施圧力等の計画がMARPOL条約(海洋汚染防止条約)や社内規定に沿っていること、原油洗浄実施時間によって荷役時間に遅れが発生 しないか確認します。

安全監督の派遣

本社では揚荷港着桟中の本船へ安全監督を派遣し、本船の着桟中の安全維持を図るとともに、船橋、甲板、ポンプルームの状態や、航海計器、防火設備、係留設備などの重要設備の点検を行います。また、荷役作業を監視すると共に経験の少ない二等航海士、三等航海士に対して荷役当直作業の助言や指導を行います。

  • 安全監督による安全点検

    安全監督による安全点検

  • 荷役当直作業の指導中

    荷役当直作業の指導中

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