石油・天然ガス開発とは?

石油・天然ガスができるまで

石油や天然ガスは、地下に堆積した大昔の生物の死骸などが微生物や高い温度により分解され、数百万年~数千万年かけて変化し生成されるものとされています。
生成された石油や天然ガスは、堆積当時の環境や時代によって偏在しているため、産油・産ガス国も地球上の一部に集中しています。

1.大昔の生物が有機物へ変化

土砂とともに海底などに沈み堆積した陸上や海の動植物の死骸が何重にも重なり、地下の微生物により分解され、ケロジェンという有機化合物に変化したといわれています。

大昔の生物が有機物へ変化

2.石油・天然ガスへの変化

ケロジェンが地下深くまで埋没すると、地下深くの高い温度と圧力により熟成されます。こうして液体に変化したものが石油、気体に変化したものが天然ガスといわれています。

石油・天然ガスへの変化

3.油田・ガス田の形成

こうして生成された石油や天然ガスは、地下深くの地層に存在する地層水との密度差による浮力により、地層中の隙間から上へ上へと時間をかけて移動していきます。上の地層へ移動した石油や天然ガスは、主に「貯留岩」と呼ばれる、隙間が多い岩石の地層に集まります。このような油ガスを貯める容器となる地質構造と、隙間がなく集積した油ガスが散逸するのを防ぐ地層の組み合わせがある条件の場所に、油田やガス田が形成されます。

油田・ガス田の形成

石油・天然ガス開発について

石油・天然ガス開発事業とは、大きく「鉱区取得」、「探鉱」、「開発」、「生産」の4つの段階を経て進行していく一連の事業です。それぞれの段階で各専門家が関与し、石油地質学、物理探査学、資源工学などの多様な専門技術を用いて評価を行います。

石油・天然ガス開発について

1.鉱区取得

油田やガス田が存在する可能性があるエリアの領有権をもつ国が、石油・天然ガス開発会社にその調査・開発を許可したエリアを「鉱区」と呼びます。石油・天然ガス開発会社は各種情報を取得・収集し、その鉱区内にどれくらいの規模の石油やガスが存在する可能性があるのかを評価します。そして有望と判断した際には、領有権を持つ国が実施する公開入札に参加したり、鉱区権益を保有する事業者から権益を買収したりすることによって鉱区を取得します。

2.探鉱

探鉱とは、地下に存在する石油や天然ガスを探す活動で、以下を中心としたプロセスから成り立っています。

地質調査

周辺の地質情報やすでに掘削されている井戸のデータから地域の地質の成り立ちを解析して、石油ガスが生成されて(根源岩)、移動し(ダイナミクス)、充分な隙間の有る岩石(貯留岩)に溜まっている(トラップ・シール)可能性があるかを評価します。これら全ての条件(石油システム)を満たして初めて石油ガスの地下での集積が可能になります。

物理探査

専用の調査船や調査車輌から地下へ向けて発信される地震波や電磁波に対する地下の応答信号を数学的に処理する事で、地下の地層の構造を把握したり、地下に分布する岩石の物理的性質を調査します。近年では、物性値を特殊な方法で解析する事で油・ガスの存在を直接的に検知する技術もあり、出光はいち早くその分野での研究に取り組んで実績をあげています。

試掘井掘削(しくつせいくっさく)

地質調査や物理探査により特定された油ガスの集積が期待されるエリア(プロスペクト)の地表・海上に掘削装置を設置して井戸を掘ります。井戸は通常3000~5000mの深さに及び、地表付近では1m弱の直径から段階的に鉄管で井戸の保護を行いながらドリルの直径を20cm程度まで減じながら掘り、岩石や地層流体のサンプルを採取し、また、地層の特徴を調べる検層ツールで地層の隙間の程度や油ガスの有無を確かめます。

生産テスト

試掘井掘削の結果として油ガスの集積が確認された場合、実際にどのくらいの流量で地表で生産可能かを調べるために、掘削装置にて試験的に生産をして確認します。この生産テストで得られたデータをもとに、生産年数や期間中の生産量の推移を見積もったり生産物の化学組成や流体性状を分析したりして、生産設備や処理設備の設計へ反映します。

石油・天然ガスの安定供給を支える探鉱開発事業には、巨額の先行投資費用とリードタイムが必要ですが、出光では根源岩から油ガスが生成されて移動する様子をコンピュータシミュレーションで再現する技術(ベースンモデリング)と地震探査データの特殊解析(直接検知技術)に重点を置き、現在の活動地域においては6~7割の高い発見確率を実現しています。

イメージ:洋上地震探査測定

洋上地震探査測定

3.開発

探鉱で得られたデータを使用して、コンピューターシミュレーションや種々の検討を元に可採埋蔵量と生産計画を推定します。
推定された生産量と生産計画を元に、最適な生産・貯蔵・出荷施設、また陸上の貯留タンクや処理施設までのパイプライン敷設などの設計とコスト計算を行います。
この設計とコスト計算の結果、商業生産可能と判断した場合、タンカーや施設の建設と生産井の掘削、パイプライン敷設などを行います。
LNG(液化天然ガス)プロジェクトの場合は、大規模な液化プラントや出荷設備も必要になるので、長期顧客の確保も同時進行で行います。

4.生産

地下の油層やガス層から生産された石油や天然ガスを一次処理(石油とガスの分離や不純物の除去)し、陸上の最終処理施設に送ります。最終処理施設で石油や天然ガスは製品として加工され、パイプラインやタンカーを通じて出荷されます。
生産が始まると、油田・ガス田の埋蔵量は徐々に減少していきます。そのため、必要に応じて増進回収法(例:油田に二酸化炭素を圧入し、油の回収増を図る手法「CO2EOR」など)を始めとする追加開発を行うなど、可能な限り多くの資源を効率良く生産できるよう取り組みます。
また、生産終了後は現地を開発前の状態に戻すべく廃坑作業を行い、影響調査のための環境モニタリングを行います。

イメージ:石油や天然ガスを採掘