自動車用CVTフルード開発プロジェクト 既存の他社製品からの切り替え採用を目的として動き出した一大プロジェクト。成功への道筋を関係者の証言から追う。

  • 自動車用CVTフルード開発プロジェクト

    STORY 1

    顧客との人間関係醸成という“土壌づくり”

    入社4年目で、当社にとっての最も重要なお客様である自動車メーカーの研究所に出向。研究員としてお客様と机を並べて仕事をしながら、製品開発、人間関係の構築に努めていました。私が背負っていた任務は、当時、競合他社が納入していたCVTフルード分野の獲得でありましたが、単純にCVTフルードそのものをPRするのではなく、オール出光の技術力や対応力をアピールしながら、各キーマンにアプローチをしていったのです。私たちは、その当時のメインサプライヤーではなかったので、現状の製品が抱える課題はもちろん、次モデルで必要となる要件やコンセプトを直接お客様から入手することができませんでした。しかも、現行品に課題がなければ、出光の製品に入れ替える必要はないのです。そのような中、良好な人間関係の中から生まれる信頼感こそが必要不可欠であるという“出光らしい”考え方のもと、この状況の打破に挑んでいきました。私が出向していた2年の間に、人間関係が構築され、提案を進める土壌ができあがったことを確信。その時点で岩井君にバトンタッチすることとなりました。
    その後、本社に異動となって立場は変わり、今度は社内の関係各所に対し、本プロジェクトの重要性を説きながら、客先に出向している岩井君と、会社、研究所などを繋ぐ司令塔の役割で、全社一丸となって取り組むよう推進していくことに徹していきました。当社の強みは、営業、開発者を含むあらゆる立場の関係者が一致団結して、ひとつの業務を進めていくときに、底知れぬパワーを発揮するという点にあると思います。当時、このプロジェクトに掛けるメンバーの意気込みは相当なものだったのです。

    潤滑油二部 潤滑技術一課 工藤 貢 2004年入社
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    STORY 2

    顧客全体を見渡し“外濠”を埋めていく

    当時、私は支店に拠点を置いて営業活動に従事。販売の窓口という立場でプロジェクトに関わっていました。工藤君がお客様の開発部門に属する方々との人間関係を構築していく一方で、私は営業という立場から、関係各所の方々へのアプローチを試みていました。相手は巨大な自動車メーカーであるため、キーマンは何も開発関係者だけに留まりません。自動車部品の仕入れを担当する購買部門や、今回対象となっているCVT以外の機構を担当する技術部門、工場のラインを立ち上げる部門など、お客様の会社全体を見据えながら、“外濠”を埋めるような感覚で、出光の技術力や、品質に対する考え、あるいはグローバルに対応可能な供給体制をアピール。同時に、対象となる車がいつ販売になるのか、どのようなコンセプトなのかという全体像を捉えたり、あるいは工藤君が入手し、プロジェクトメンバー全員が共有していた情報の裏を取りながら、その精度を上げていくことに注力していきました。そして、紆余曲折あったものの開発が進み、無事製品化となった後、最後のアンカーとして価格交渉に臨むのも私たち営業担当の役目。これまでのメンバーの苦労や思いを背負いながら、商談を進めていったものです。
    最終的には、当社の製品が採用されることとなったのですが、お客様である自動車メーカーのキーマンの方々も一緒になって、我がことのように喜んでくれたのが印象的でした。それだけ、仕事を越えた人間関係が構築できていたのだと実感したものです。

    潤滑油二部 潤滑技術一課 山本 誠一郎 2004年入社
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    STORY 3

    運命の“評価会”の結果を聞いた瞬間

    工藤さんの後を引き継いで、自動車メーカーに出向。醸成されてきた“土壌”を活用しつつ、他社採用となっている製品を覆すべくアプローチを続けました。ターニングポイントとなったのは、その他社製品がお客様の要求スペックを満足せず、“NG品”との判定を受けたこと。キーマンから直接、最短で情報を得ることができたので、すぐにプロジェクトメンバー全員に連絡を入れ、「このチャンスを逃すべきではない」と強調しました。対象となる製品の開発を担当していた成田さんと密接にやり取りをしながら、その2日後に代替となるサンプル品を納入するというスピード感を持って対応。以降、お客様が求めるスペックを満足すべく提案を進めていきました。その時点では、当然、NG判定を出された競合他社も黙ってはいません。必死の攻防戦が始まることとなります。しかし、工藤さんが築いてきた人間関係と、山本さんが外濠からPRを続けてきたことによりイメージが確立していた出光の技術力に防御されながら、私も必死に食らいついていきました。その甲斐あって、自動車メーカーの開発者による“評価会”において、出光が提案したオイルが優先評価を受ける対象として認定。以降、大きなトラブルがない限り、他社ではなく出光の製品が採用されることに決定したのでした。しかし、いうなればそこからが当社にとっての本当の意味でのスタートとなります。研究所のメンバーと共に、量産化に向けての詳細検討を進めていきました。このプロジェクトにより、あらためて出光の技術力を、ひいては自動車メーカーと組むことで、日本の技術力を世界へアピールすることができたものと自負しています。

    潤滑油二部 営業研究所 駆動系油グループ 岩井 利晃主任 2005年入社
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    STORY 4

    “手探り状態”の中で検討をスタート

    本プロジェクトのスタート時点から、開発に携わってきました。後発メーカーということで正式なスペック提示がない中、客先に駐在している若手社員たちから報告のあった情報から予測して、ある意味、手探り状態の中で、お客様にとってメリットある提案をしていかなくてはなりませんでした。そして、岩井君の情報により、他社製品がNG判定となったことをチャンスと捉え、まずはなぜNGになったのか、その原因を分析するために、自動車の該当部分の機構を再現し、実証試験をしながらオイルをブレンド。情報をキャッチした日から数えて2日後には、サンプル製品をお客様に届けていました。これまでに経験したことのない問題を正しく分析し、それに見合った新しいオイルを作ることは、研究員だけではなく、ブレンド作業に従事する人の手も必要です。ましてや、通常であれば2週間ほどの時間を要する作業を、わずか1、2日で進めなくてはならないわけですから、作業担当者に対して依頼する立場にある私たちも大変心苦しい思いはありました。しかし、このプロジェクトの意義を伝え、ご理解いただきながら作業を進めていったのです。
    今回、対象となるCVTフルードは、いくつもの要求スペックをひとつのオイルですべて満足させながら、全体レベルを底あげしなくてはならないという、大変難易度の高いものでした。評価会が終了し、ほっとしたのも束の間、すぐに量産に向けての図面づくりや詳細検討を行い、無事量産が開始した時点で本プロジェクトの成功を実感したものです。

    潤滑油二部 営業研究所 成田 恵一主任部員 1990年入社
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    STORY 5

    このプロジェクトがもたらした意義の大きさ

    今回のプロジェクトを統括する立場としては、まず他社採用品を覆さなくてはならないという非常に困難なミッションを背負いながらスタートを切ったものの、メンバー全員の自主的な活動が良いカタチで実を結んだ好例であったと自負しています。本プロジェクトは、その売上貢献度、社会的影響力などが評価され、社内で表彰されることとなりましたが、私がもっとも意義を感じているのは、お客様の中に入り込んで、人間関係を構築していくという、“出光らしい”やり方が、最大の効果を発揮できた点にあると思っています。自動車メーカーと共同で開発を進めていく段階で、時にはお客様が当社の研究所の一部を活用して、最後まで開発を進められました。それだけ、お客様と当社が密接な関係となっていたこと、そして信頼を寄せて下さっていたことを改めて実感したものでした。また、社内的にも若手社員を中心に、多くのメンバーがこのプロジェクトに関わり、大きな成功体験を獲得することができました。「メンバー全員が同じ方向を見ながら一致団結することでなしえる」という精神を実際の成果として体現できたことも良い点であったと思っています。
    これからの出光を背負っていくであろう若手社員にとって、困難な仕事に立ち向かう姿勢やマインドの部分におけるロールモデルになれたことが何よりも嬉しく感じているのです。

    潤滑油二部 潤滑技術一課 池田 利樹課長 1993年入社
※所属は取材当時のものです。