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開館50周年記念 時代を映す仮名のかたち―『見努世友』と古筆の名品

開催期間
2016年11月19日(土)〜12月18日(日)

みどころ

古筆と和歌史を関連づけたユニークな構成の展覧会です

平安時代の、他の時代にはない優雅な書きぶりの歌集の写本。鎌倉時代になるとにわかに増える明確・厳格な書様の和歌懐紙、自撰家集等の自詠自筆の和歌資料。奔放な書様の目立つ南北朝〜室町時代前期の続歌の遺品。室町時代後期の重厚華麗な書様の公宴和歌懐紙と短冊。各時代に特徴的な古筆の背景に、和歌史との関係を見ることで、それぞれの時代の作品と書様は、その時代に盛んであった和歌活動の場から生成された“かたち”であったことを示唆する、従来にはない構成です。

展覧会の構成

  1. 1.平安時代 ―私的な場の和歌の趣を反映 繊細・優雅な調度手本
  2. 2.鎌倉〜南北朝時代前期 ―晴の場の和歌 和歌懐紙、定数歌、自撰家集、勅撰関連資料
  3. 3.南北朝〜室町時代前期 ―変化の時代の和歌 続歌、白短冊、着到和歌
  4. 4.室町時代後期 ―紙の上だけの宮中歌会 公宴和歌の懐紙と短冊

各章の解説

1.平安時代 ―私的な場の和歌の趣を反映 繊細・優雅な調度手本

高野切第三種(国宝手鑑『見努世友』の内)
伝紀貫之 平安時代 出光美術館蔵

平安時代、905年に最初の勅撰和歌集である『古今和歌集』が編纂された頃から、和歌は宮廷でも盛んに用いられるようになり、それまで漢詩の独壇場であった晴(はれ)の場にも通用する歌となりました。一方で、この時代の和歌の大きな役割には、王朝の貴族たちの褻(け)の場における、洗練されたコミュニケーションの道具という側面がありました。このような場で書き交わされた和歌の遺品自体はのこっていません。しかし、この時代の調度手本(ちょうどてほん)といわれる歌集の写本に見る、墨の濃淡や散らし書き、細い筆線によるたおやかな連綿などは、他の時代のテキストにはない趣きです。このような繊細で優雅な書きぶりには、能書家によって汲み取られた、私的な場でのやりとりの情趣が反映していると考えられます。このコーナーには、これら調度手本類を中心に、褻の場の和歌のやりとりをイメージさせる、仮名消息を展示します。

2.鎌倉〜南北朝時代前期 ―晴の場の和歌 和歌懐紙、定数歌、自撰家集、勅撰関連資料

広沢切(部分) 伏見天皇 鎌倉時代 重要文化財
出光美術館蔵

鎌倉時代には、社会における和歌の役割が、褻の場から晴の場へと大きく旋回しました。このような変化の背景には、武力では圧倒的強者の、関東の武家政権に対して、王権の優位を文化的に示威する役割が、公家文化の象徴である和歌に求められたことが考えられます。宮中や行幸先の歌会の和歌懐紙、頻繁な勅撰集の編纂に関わる定数歌(ていすうか)や自撰家集等、宮廷の貴族たちは晴の場との関わりで、和歌を詠むことが求められ、自詠を自筆で記す機会が増えました。このような緊張を伴う場で詠まれた和歌を記す仮名には、明確で厳格な力強さが見られます。一方、鎌倉時代の歌集の写本の書様は、濃い墨色と太い線、整斉な字形と、行の中心を真っ直ぐに通した書きぶりが目立ちますが、これは晴の場で詠まれた自詠自筆の仮名と呼応しています。このコーナーには、自詠自筆の懐紙や定数歌等の作品と、能書家による明確な書様の手本や写本類、また、和歌にとって最高の晴舞台として機能した、勅撰集関連の資料と、文化的には鎌倉時代を継承する南北朝時代前期の和歌資料を展示します。

3.南北朝〜室町時代前期―変化の時代の和歌 続歌、白短冊、着到和歌

南北朝〜室町時代前期には、王朝の分裂、武家の京における本格的台頭と歌壇への参入、宮廷社会の動揺と衰退を背景に、和歌の詠み方、記され方にも変化が生まれます。「続歌(つぎうた)」という歌会形式や、これを記す用紙である「短冊」が盛行します。複数人で定数歌を分けて詠む続歌は、一人で詠むより負担が軽く、短冊は懐紙に比べて書式が簡略です。更に続歌による歌会は、能力に応じて和歌行事に参加でき、人を集わせて主宰すれば、祈願や連帯を形にすることもできるため、和歌世界に新興の勢力であった武家には適った形式だったと考えられます。一方、経済基盤が崩壊し、武家の専制に脅かされることになった公家にとっても、娯楽的に仲間内で集うにも、武家を交えて機嫌を伺うのにも便利な形式だったと思われます。また、この時代には、連歌や和漢連句の催しも、和歌会と並行して盛んに行われました。この時期に盛行した続歌、連歌、和漢連句といった、従来、和歌に対する従的存在であった創作形式や、それを記す仮名の書様――和歌を記していた仮名が細字で整斉・謹直であるのに対して、大字で奔放な傾向があります――が、この時期以降の和歌を記す仮名に与えた影響は無視できないものがあります。このコーナーでは、室町初期の続歌の白短冊(しろたんざく)、続歌を巻物に記した写本、室町時代の定数歌、後土御門朝に盛行した着到和歌(ちゃくとうわか)の遺品とともに、連歌巻、和漢連句巻を展示します。また、書様の傾向が同様の、この時代の歌集の写本もご覧いただきます。

もっとみどころ1

平安〜室町の各時代の名品、逸品が一堂に!

藍紙本万葉集 巻第九(部分) 藤原伊房
平安時代 国宝 京都国立博物館蔵

平安時代の古筆では、館蔵品から、国宝手鑑『見努世友(みぬよのとも)』所収の「高野切(こうやぎれ)第三種」を筆頭とした優美な平安仮名の数々と、「継色紙」「高野切第一種」「石山切」『中務集(なかつかさしゅう)』等を展観。借用作品としては、平安時代には異色の雄勁な古筆『藍紙本(らんしぼん)万葉集 巻第九』や、流麗な連綿美の「端白切(はたじろぎれ)」、11世紀の貴重な仮名消息の遺品「表制集紙背仮名消息(ひょうせいしゅうしはいかなしょうそく) 巻四」にご注目。鎌倉時代では、館蔵の伏見天皇筆「広沢切」に、借用作品の後鳥羽天皇筆「熊野懐紙」、西園寺実兼(さいおんじさねかね)筆「百首詠草断簡」、伝後京極良経(でんごきょうごくよしつね)筆「新古今和歌集竟宴和歌懐紙」、中臣祐定(なかとみすけさだ)他筆「春日懐紙」等が加わり、自詠自筆の作品が充実。南北朝〜室町時代の古筆としては、館蔵の後小松天皇筆「詠百首倭哥」、後土御門天皇他筆「懐紙帖」、後柏原天皇筆「和歌懐紙」の他、借用作品として、天・地が藍・紫の打曇紙(うちぐもりがみ)の公宴歌会の短冊を満載した「久世家旧蔵 短冊帖」、後柏原朝の名だたる皇族・公卿の筆跡と、当時の料紙装飾の粋を結集した「慈鎮(じちん)和尚三百年忌和歌短冊帖」等、めったに見られない作品を出品します。各時代の作品をご堪能ください。

4.室町時代後期 ―紙の上だけの宮中歌会 公宴和歌の懐紙と短冊

慈鎮和尚三百年忌和歌短冊帖(部分) 後柏原天皇他 室町時代

室町時代後期、実権を武家の幕府に握られて形骸化した公家政権を、象徴的な意味で復活させたのが、後柏原朝とこれに続く後奈良朝の公宴和歌です。後柏原天皇は、短冊による続歌が優勢であった、宮中の月次歌会(つきなみかかい)に和歌懐紙を復活。懐紙と短冊を隔月で用いる三首歌会と、正月・七夕・重陽の一首懐紙の歌会で構成された、宮中歌会のシステム「公宴和歌」を整備しました。毎月催される懐紙と短冊による歌会の場は、大変盛況に見えます。しかし、実は、経済的に不如意であったこの時代の宮廷事情を反映して、正月の会始以外は参会を伴わない紙の上だけの宴であり、王朝への懐古的、典礼的な志向の強い創作の場でした。その仮名の書様は、一端はくずれかけた伝統を立て直すことを志向するかのように、典礼に相応しい、重厚豊麗、立派な趣きがあります。一方、室町時代の歌集や物語の写本、詞書に見える仮名の書様にも、同様の重厚な趣が見られますが、これはこの時期には、宮廷を中心とする和歌の詠者と能書が重なってくることとも関係します。このコーナーには、後柏原朝の公宴和歌懐紙と短冊、料紙装飾の華麗な法楽和歌短冊を中心に、同様の書様による歌集の写本を展示します。

もっとみどころ2

中世古筆を充実の内容でご紹介します

中世の古筆には、内容として興味深く、筆跡や料紙にも見所のある古筆が数多くあります。例えば鎌倉末期の「金剛院切」他、美麗な装飾料紙に和歌を散らし書きにした古筆群。近年の研究で、勅撰集等の公的な目的に関連して、女性か貴人が詠進した和歌の清書本と推定されています。同様の料紙装飾の法楽和歌「足利尊氏奉納春日社詠七首和歌(七社切)」とともに、見応え十分です。また、室町時代に盛行した歌会の形式である続歌関連の古筆作品も集結。今では周知の「短冊」は、この続歌の料紙として発達します。「もっとみどこころ1」で挙げた短冊作品の他、初期に多い幅が狭く白色の白短冊の遺品「頓証寺(とんしょうじ)法楽一日千首短冊残闕(ざんけつ)」や「着到和歌短冊」。宮中の続歌歌会の短冊を巻物に記録した後崇光院(ごすこういん)他筆「禁裏御会和歌」等も一堂に会します。続歌と短冊の発達、展開の過程を、記された仮名の書様とともにご覧ください。

本展の基本情報


開館時間
午前10時〜午後5時(入館は午後4時30分まで)
毎週金曜日は午前10時〜午後7時(入館は午後6時30分まで)

会期・開館時間は都合により変更することがあります。最新情報は当ウェブサイトまたはハローダイヤル(03-5777-8600)でご確認ください。
休館日
毎週月曜日
入館料
一般1,000円/高・大生700円(団体20名以上 各200円引)
中学生以下無料(ただし保護者の同伴が必要です)
※障害者手帳をお持ちの方は200円引、その介護者1名は無料です
電話番号
ハローダイヤル
03-5777-8600(展覧会案内)

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