石油タンク浮屋根のスロッシングシミュレーションによる構造設計技術

2005年度の石油学会―技術進歩賞を受賞

(授賞理由)

  1. 浮屋根のスロッシングによる損傷原因として、二次モードによる変形・破壊に対して解明したのは、本開発が初めてであり、新規性・進歩性が認められました。また、一次モードに対しても、定量的かつ一般化した評価方法を提案しており、先行技術よりも優れていると認められました。
  2. 本開発は、2005年4月から施行された「危険物の規制に関する規則の一部を改正する省令等の施行について」に引用され、シングルデッキ型浮屋根の耐震性向上対策へ大いに適用されることから、本技術の有用性が認められました。
  3. さらには、浮屋根のスロッシングシミュレーションは膨大な計算であり、シミュレーションの結果をまとめ、簡易計算式を導かせたことは、多大な労力と計算費用を大幅に削減することが期待でき、経済効果も大きいと認められました。

以下に受賞の技術内容を紹介します。

概要

  1. 2003年十勝沖地震により、大きなスロッシングが発生し、浮屋根式タンクが損傷しました。
  2. 浮屋根が貯蔵油上にある状態では、スロッシングする貯蔵油とスロッシングを抑制する浮屋根の連動を考慮しないといけませんが、このような連動を考慮した浮屋根の動きや強度については、これまでは十分に解明されていませんでした。
  3. そこで、貯蔵油と浮屋根の連動を考慮したスロッシングシミュレーションを実施して、浮屋根の損傷原因の解明、損傷防止策を立ててきました。

シミュレーションの概要

右図に示すように、貯蔵油・側板・浮屋根(デッキ板・ポンツーン)・ゲージポール・回転止めをモデル化し、地震波を入力して、時刻暦解析を行い、時々刻々、変化する様子をシミュレートしました。下図に一例を示します。

シミュレーションモデル

シミュレーション結果

浮屋根の変形状態

スロッシングシミュレーションにより得られた浮屋根の変形状態は、下図に示すように、スロッシングのモードによって、異なることを明らかにしました。

浮屋根の変形状態

損傷原因の解明

スロッシングシミュレーションで得られた浮屋根の変形量を入力して、弾塑性・大変形・座屈を考慮したポンツーン部の構造解析を行い、以下とおりスロッシングのモードによってメカニズムが異なることを解明しました。

  1. 一次モードのスロッシングにより、ポンツーンに鉛直方向のたわみが発生し、降伏座屈、開口に至った。
  2. 二次モードのスロッシングによりポンツーンに半径方向の収縮変形(縮み)が発生し、降伏座屈、開口に至った。

公的な浮屋根の強度評価審査基準への反映

十勝沖地震の被害を受けて、消防庁に「石油コンビナート等防災体制検討会」が設置され、浮屋根の強度評価手法の確立が指摘されました。その指摘を受けて、危険物保安技術協会に「屋外タンク浮屋根審査基準検討会」が設置されました。
その検討会のなかで、本シミュレーションが高い評価を受け、浮屋根の強度評価に関する審査基準には本シミュレーションのデータが不可欠であり、データの提供・協力の要請をされました。
その要請を受け協力してきた結果、浮屋根の強度評価に関する審査基準に本シミュレーションのデータが活用されることとなりました。

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