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廃水ストリッパー塔頂空冷器の腐食防止におけるプロセス解析の適用

概要

廃水ストリッパー塔頂空冷器チューブにおいて、激しい腐食が発生しました。腐食が発生したのは、図1に示した空冷器チューブ出口側で、最下段チューブに集中していました。当該空冷器は、NH3、H2Sを含む水蒸気を凝縮させるものです。凝縮水は、弱アルカリ性を示しますが、NH3とH2Sによる塩「水硫化アンモニウム(NH4HS)」濃度が高くなると、激しい腐食を引き起こす場合があります。また、当該チューブ材料は、SUS316であり、通常であれば問題なく使用できますが、激しい腐食を引き起こしたことから、過酷な腐食環境が形成されていたと推定されます。そこで、OLI社のStream Analyzerを使用して解析を行い、腐食環境を推定した上で、対策を行い、腐食を低減させた事例を紹介します。
図1 プロセスフロー
図2 空冷器を出口側から見た模式図

腐食形態および腐食部位

空冷器は、4段、1パスタイプです(図2)。空気は下部から押し込まれるため、最下段チューブが最も金属温度が低く、上段ほど金属温度は高くなります。激しい腐食は、最下段チューブの出口側といった温度の低い部分に発生しました。腐食は、スケールを伴わない全面腐食の形態を呈しており、チューブの上面(気相部)にのみ発生しておりました。チューブの底面(液相部)は腐食しておらず、表面は硫化鉄の皮膜に覆われていました。
図3 液相での温度と水硫化アンモニウム(Nh4HS)濃度の関係

シミュレーションによる環境推定

(1)液相でのシミュレーション

チューブ底面を流れる液相でのNH4HS濃度をシミュレーションしました。図3に示すように、温度の低下に伴いNH4HS濃度は上昇しますが、最下段(No.4)チューブ推定出口温度78℃で、設計でのNH4HS濃度である10wt%となり、運転データとも一致しておりました。実際、液相での腐食は軽微であり、SUS316もに対してはマイルドな腐食環境であることが確認できました。

(2)気相でのシミュレーション

激しい腐食が発生した気相部では、前述の液相での推定環境よりも過酷な腐食環境となっていたと考えられます。気相部には薄い水膜あるいは液滴が生成し、そこに大量のH2S、NH3が溶け込み、局部的に高濃度のNH4HS環境が生成していた可能性があります。この事象は、以下のモデル(図4)を仮定すると首尾よく説明できます。すなわち、気相部でチューブの過冷却が起こると、(1)で示したバルクでの平衡(平衡B)とは別の平衡(平衡A)が成り立ち、局部的に高濃度のNH4HSが生成するといったものです。これを、シミュレーションにより確認したところ、図5に示すように、仮に管壁温度が50℃まで低下した場合には、気相部内表面の水膜で34wt%のNH4HSが生成することになります。この濃度では、SUS316も激しく減肉することは、実験でも確かめられています。
図4 高濃度NH4HS生成推定モデル模式図
図5 気相部でのシミュレーション結果

対策

一般に、腐食は高温ほど激しくなりますが、当該機器の場合、温度を上げることが有効な対策となりました。空冷器の出口温度を上げることは、気相部の腐食性ガス濃度の低減に効果的でした。加えて、ヒーティングコイルでチューブを加熱することで、チューブの過冷却を防止し、気相部の水膜中のNH4HS濃度を低減しました。実際に、これらを実施することで、腐食低減の効果が確認されました。
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