精神上の定款が出光の目的である。これをはっきりと若い人に遺言相続する。


終戦後の電気部(福岡県飯塚店)

主義と言えば、なんだか、非常に大切なもののように考えるかもしれないが、その奴隷になってはいけない。
出光は主義の奴隷にはなっていない。
主義のなかのいいところをとって、悪いところは捨てておる。
出光には資本主義もあれば、社会主義もあり、共産主義もある。
資本主義の人を搾取するというような悪いところは捨て、社会主義の国営なんていう非能率な、人間を生殺しにすることは否定し、共産主義の働く者も働かぬ者も平等であるというような公平でない点は否定する。
悪平等と公平との区別のつかない点はとらない。
それで出光は主義にとらわれてはいない、主義には関係ありませんということである。

今の世界の人々はなんのために主義主張ばかりして、喧嘩をしておるのかわからない。
これを諸君が心得れば、社会に対立闘争の混乱はなくなると思う。
若い人たちには、まず日本人放れした日本人を、本当の日本人にかえすように努力しなければならない。
それには何十年かかるかわからないが、案外これは早くいくだろうと思う。
その次に、無我無私なんていうことが全然わからない外国人に、そのあり方、平和福祉のあり方を教えなければならない。
こういうことは五十年かかるか、百年かかるかわからない。

出光は石油業なんてちいさいことをやっているのではない。
真に働く人間の姿を現して、国家社会に示唆を与え世界の平和、福祉をつくることが、出光の目的なんだ。
それを君らはやっていかなければならない。これを私は、はっきりと若い人に遺言相続しておく。
これは楽な遺言じゃないぞ。借金より辛いぞ。和を以って人を指導する仕事なんだから。
君たちが去年、重大な実習をやって、新しい自負心をもって創業五十六年に向かって力強く出発することは非常に結構なことだ。

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